「お客様の声を聞きましょう」——どんなビジネス書にも書かれているフレーズです。しかし、実際にお客様の深層心理まで掘り下げ、そこから具体的な戦略に落とし込めている企業は、どれほどあるでしょうか。
今回は、Apple・IBM・パナソニック・NECといったグローバル大手企業が採用している「デザイン思考」の考え方と、それをAIの力で中小企業でも実践可能にした取り組みについてお伝えします。
デザイン思考とは何か ― その歴史
デザイン思考は、2000年頃にアメリカのデザインファームIDEO(アイディオ)が提唱した考え方です。デザイナーの視点で顧客の行動を観察し、そこから課題を発見して解決策を導く——いわば「顧客視点のイノベーション手法」として生まれました。
その後、Apple、IBM、日本ではパナソニックやNECなど、多くの大手企業がこの考え方を採用。「いかに顧客の立場で考えるか」をビジネスの中核に据える動きが、世界中に広がっています。
日本代表として学んだデザイン思考
私自身、千葉県に本社を置くEC企業QVCに在籍していた際、当時の社長がグローバル全体でデザイン思考を推進するプロジェクトを開始しました。社内200名の中から日本代表5名の一人に選ばれ、英語でデザイン思考に対する期待やビジョンをプレゼンテーション。グローバル選考を経て、約3ヶ月間の集中研修で実践的にデザイン思考を学びました。
デザイン思考の5つのプロセス

まず、お客様の課題を設定し、実際に現場へ赴いて行動を観察します。「なぜそのような行動をとるのか」を観察・インタビューしながら深掘りします。そこからアイデアを発想し、低コスト(1万円以内)でプロトタイプを作成。チームで共有し、検証を繰り返していきます。
鍵を握る「エクストリームユーザー」デザイン思考で特徴的なのが、観察対象に「エクストリームユーザー」を選ぶことです。一般的な顧客ではなく、その道のプロ、まったくの素人、あるいは本来の対象外の人々——こうした”極端な人たち”の声を聞くことで、通常では生まれない斬新なアイデアが浮かびあがります。
任天堂Switchに見るエクストリームユーザーの力
わかりやすい例が、任天堂Switchの開発背景です。従来はコアゲーマーを中心にリサーチしていましたが、売上の伸び悩みに直面。そこで視点を変え、高齢者や子どもたちにゲームに対する意見を聞きました。
すると、「今のゲーム機はボタンが多すぎて使いづらい」という声が。さらに深層心理を掘り下げると、「おじいちゃん・おばあちゃんも家族みんなで一緒に遊びたい」という切実な想いがありました。この気づきが、シンプルで直感的な操作のSwitchを生み出す原動力となったのです。
通常では考えられない人たちの
行動と心理を分析することが、
イノベーションの鍵になる。
しかし、現場では頓挫するケースが多い
私自身、KVC時代にデザイン思考のプロジェクトを5つ手がけました。しかし正直に言えば、そのほとんどが頓挫しました。アイデアは出る。けれど、「それが本当に実現できるのか」が現場レベルで判断できず、結局は立ち消えてしまうケースがほとんどだったのです。
これは多くの企業に共通する課題です。デザイン思考は素晴らしい手法ですが、アイデアを戦略に落とし込む「最後の一歩」が圧倒的に不足していたのです。
AIエージェント「DeepVoice」で突破口を開く
この課題を解決するために開発したのが、AIエージェント「DeepVoice」です。お客様の声を収集し、深層心理まで分析。さらにアイデアを拡張し、実行可能な戦略まで一気通貫で導き出すプロダクトです。
生成AIの力を活用することで、従来は膨大な時間と専門知識が必要だった分析・発想のプロセスを大幅に効率化。デザイン思考の「良い部分」を活かしながら、実務に落とし込むところまでを一つの流れで実現します。

導入事例:実際に成果が出ている現場
Case 01佐々木製茶株式会社
「お茶の淹れ方・飲み方をどう顧客に伝えればいいか」という課題からスタート。Webサイトの行動データをもとに顧客の深層心理を分析し、社員が出したアイデアをベースに50個のアイデアへ拡張。そこからアカウントベースマーケティング(ABM)で、どの顧客にターゲットを絞って営業すべきかまで戦略を確定しました。
▶ 現在、1,500万円の営業見込みに向けて戦略を実行中
Case 02三谷工業株式会社
30社へのヒアリング・アンケート調査を実施し、DeepVoiceで深層心理を分析。その結果、一般修理に対する技術品質が主要課題として浮上しました。改善アイデアを共創し、現在は修理マニュアルを画像化してAIを活用したナレッジシステムを導入。社内で情報共有を推進し、リーダー候補5名を選定するところまで進んでいます。
▶ AI活用ナレッジシステムの導入とリーダー育成を推進中
中小企業にこそ、この手法が効く理由
中小企業の多くは、まだAI自体への理解が進んでいないのが実情です。そこで私たちは、まずAIによる業務効率化から導入を始めます。実際に業務量が6割削減できた事例もあり、「AIってすごい」という実感を持っていただきます。
そして、効率化で生まれた余った時間を使って、新しいイノベーションに取り組む——この流れでデザイン思考の考えを自然に導入していきます。
あえて「デザイン思考」とは言わない
デザイン思考を言葉で教えても、なかなか理解されないのが現実です。だからこそ、あえて「デザイン思考」という言葉は使わず、「AIを使って一緒に新しいアイデアを作りましょう」という文脈で自然に進めています。AIエージェントのアプリがあるため、お客様の抵抗感も少なく、直感的に取り組んでいただけます。
この方法の最大のポイントは、お客様自身の声からアイデアが生まれるということ。現場の社員が自分たちの課題に基づいてアイデアを出すことで「自分ごと」になり、実際に使えるアイデアが自然と生まれてきます。
AIと人をつなぐ、これからのコンサルティング
デザイン思考を実際の業務に活かすために必要なのは、「AIと人をつなぐコンサルティング」です。テクノロジーだけでも、人の力だけでもなく、その両方を掛け合わせることで初めて、本当に使えるイノベーションが生まれます。
今後は、AIエージェントのアプリをさらに進化させながら、人が本来持っているアイデアの力を引き出し、実行可能な戦略へとつなげていく。そうした「人の創造力 × AIの分析力」の接点を、より多くの企業に届けていきたいと考えています。
人が本来持っているアイデアを引き出し、
実際に使える戦略をつくる。
それが、AI時代のデザイン思考。




